子どもたちが「花山出身」と胸を張る、誇りあるまちに /はなやまネットワーク座談会

宮城県の西北、栗駒山の麓に位置する栗原市花山地区。四季の景色が美しい花山湖周辺は公共施設が集まる町の中心になっています。中山間地域ならではの過疎化と少子高齢化が進む地域の課題に取り組み、まちづくりや移住希望者サポートを行う一般社団法人はなやまネットワークの事務局長佐々木徳吉さん、同理事で15年前に仙台から移住し、そば店「山菜茶屋ざらぼう」を経営する伊藤廣司さんの2人にお話を伺いました。


あるものを生かしながら、過疎化と高齢化の地域課題に取り組む


佐々木さん 生まれも育ちも花山。公務員として栗原市役所に勤めていた2014年に、道の駅を核とした地域づくり「小さな拠点づくり推進協議会」に携わり、その事業を継ぐ形で一般社団法人「はなやまネットワーク」を立ち上げました。過疎化と高齢化が進む地域で、文化や風土を次世代につなぎながら、住み慣れた土地で支え合い、暮らし続ける未来をつくる取り組みです。指定管理者として「農山村交流センター」と、栗原の特産品を販売する「旬彩」を経営していますが、旬彩は、物販だけでなく、地元の人が集える喫茶店としてコミュニティースペースを設けました。ランチは日曜・祝日限定で、包括支援センターや老人ホームの方などにも利用してもらっています。店は、国道398号の冬期(12月〜4月)閉鎖に伴い、観光客が激減するので営業が難しいところもありますが、住民の交流の場があることが暮らしやすさにつながっていくと思います。

また、地域の公共交通として、自宅玄関から指定の場所まで送迎するデマンド対応交通サービスを請け負っており、診療所への送迎になどに利用する人に喜ばれています。移住定住促進事業としては、「空き家片付け隊」として片付けた空き家を移住者に提供しています。移住定住を進めるうえで、住む家を世話することが必要なので、増える空き家を生かそうと始めました。空き家の持ち主は首都圏など遠方にいることが多いので片づける時間がない人がほとんど。今まで9軒手掛けたうち、地域おこし協力隊員を含め3軒に住んでもらっています。


—15年前に花山村(当時)に移住した伊藤さんは移住の先駆者。「小さな拠点づくり」プロジェクトチームに関わり、はなやまネットワークの理事、移住定住コンシェルジュとして移住者希望者にアドバイスもされています。そもそもの移住の経緯は?

伊藤さん 移住する前は、出版社の営業で東北を担当し、役場を回る仕事をしていました。岩手県出身で実家も農家ではなかったのですが、退職して農業をしたいと思っていたので、仕事の合間に役場の人たちに移住できそうなところを聞いていたんです。花山村(当時)では、「農地の売買・賃借は面積50a以上が条件だが、10aで売買できる特区の申請をするがどうだろう」と誘われました。「申請が通ったら」なんて返事をして3か月くらい経った頃、本当に申請が通ったと連絡が来たんです。仕事と、趣味の登山で栗駒山に来たことはあっても住むにあたってどんなところか何も分からない。断るに断れずといった状況になりましたが、不思議な縁だったと思います。

55歳のときでした。当時は移住についてのサポートがなく、自分で地主さんと交渉し手続きしました。地元の農業委員会で農地を買う許可をもらった後に、次は、そこに家を建てるには宮城県の許可がいると伝えられました。県の農業会議は年に2、3回しか開かれないとあって、会社を辞め元の家も売り払っていたのに、土地を買っても家を建てられず…。工務店の事務所を借りて、妻と一緒にひと冬過ごす苦い体験をしました。役場に頼り過ぎて勉強不足でしたね。山の土を盛った農地で土づくりから始め、きちんと収穫できるまで3年くらい掛かかりました。私が移住した当時、はなやまネットワークみたいな仕組みがあれば良かったと思いますね。移住して1年後にそば店をオープンしました。家を建てる際に何か商売をしようと考えていたので、店にできるよう計画して作っていました。そばが好きだったのと、この土地で栽培もしていて、製粉できる所もあると知り、県の広報誌でそば打ちを教えてくれるところを見つけて習うことができました。こちらに来てからそば店にすることを決めたんです。ほかの移住予定先とは比較できませんが、今はここにきて良かったと思っています。


移住に求めるもの、移住者に求められるもの


伊藤さん 地域との関わりが大きく変わったのは、移住して3年目の2008年に起きた岩手・宮城内陸地震でした。幹線道路の398号線が通行止めになり、私の家のある地区も立ち入ることができなくなりました。長い避難所生活の中、そこに集まった人たちで「花山震災復興の会」を立ち上げたんです。後に、今後の地域の在り方も話し合おうと、地域外からも広く会員募集をし、ほかの被災地区の人たちとも連携して活動しました。私が事務局長となり、その活動を機に地域と関わりを深めることになったんです。移住したときは、田舎で好きなことをしてのんびり暮らそうと思っていたのですが…。人は1人では生きられないですからね、みんながこの地域でずっと暮らしていけるようにという思いで事業を手伝っています。

—花山に来る移住者希望者へどんなアドバイスをしていますか?
佐々木さん 田舎は、都会のように近所と付き合わずに暮らすのは難しい。行事などに参加したり自分から隣近所と付き合ったりする人だと長続きするし、溶け込めないと離れていくようです。これまでにも家を買って移住したけど、夜の静けさが怖いと5日で帰ってしまった若者や、近所の人からの会合の誘いが苦痛で離れた人もいる。一方で、シングルマザーの親子は、仕事の都合でこの土地を離れた後も学校が好きで、仲間に会いにお祭りに来たりしている。目的を持ってくる人はお世話しやすく感じます。例えば、無農薬野菜を作りたいが、ほかの土地で断られて…という人や、太陽光発電の会社を立ち上げたいといった人などは土地がたくさんある分、スムーズでした。

伊藤さん 今は移住までの手厚い支援があり、住まいのことや生活もいろいろ教えてくれますが、住んでからは近隣の住民の人たちと関わっていかないと「住民」としてなじみにくくなる。とはいえ、移住を希望する人のいろいろな考え方に、こちらも対応していかなければ…とも思っているんです。移住者間の交流も含め、関わり方は今後の活動の課題ですね。

佐々木さん 花山地区には、最大9泊10日滞在できる移住体験住宅があり、移住希望者に無料で貸しています。気候を体験し、ここでの暮らしが見えるのでこのシステムを利用する人は移住後もスムーズなように思います。


—花山の暮らしの魅力とは?

佐々木さん 最高の売りは水がきれいなこと、人情に厚いこと。祭りや会合など、何かと誘いがあるので一人でぽつんとすることにならない。仕事を世話することはできませんが、栗原市の中心部の築館まで車で30分なので、車があれば仕事を見つけやすいと思います。栗原市は子育て支援が手厚いので子どもを育てる環境としておすすめします。花山小学校は全校生徒で20人くらいなので、兄弟のように仲良く過ごしています。2学年一緒の複式学級で予習復習が2年分できるから、みんな優秀で発言力もあり、積極的です。過疎の町でも、将来子どもたちが胸を張って「出身校は花山小学校」と答えられるよう、大勢が関わりながら地域や学校を好きになってもらう取り組みをしています。

伊藤さん 田舎に自然を求めてくる人は多いけど、夏場の草刈りや、豪雪地帯ならではの除雪もある、その覚悟は必要。自然豊かな分、プラスもあるし、マイナスもあり、生活のすべてひっくるめて魅力といえます。また、自分で食べるものを自分で作るのを楽しめる人には魅力に感じるはずです。農業、暮らしのことなど自分で何でもやってみたいなら田舎がおすすめです。こういう場所で地域に関わりながら暮らしていると、世の中が見えてきます。子子どもや高齢者の問題、気候の温暖化も、一番弱いところにひずみが出てくる。社会の在り方、世の中の動きが実感として分かりますね。


紡いできた暮らしと地域文化の継承として


佐々木さん 首都圏の移住イベントなどで花山地区のことを話すときは、現在人口990人で高齢化率が52%と高く、14ある集落の中には、高齢化率7割を超えるところもあるので、持続可能な地域づくりを手伝って欲しいと話しています。今、まちづくりの取り組みのひとつで、吉本興業の芸人が地方に住んで活動する「吉本住みます芸人」企画として、空き家のリノベーションをDIYで行ってもらっています。そこに移住や地域おこしに関心のある首都圏の若者たちも一緒に集い、花山で何ができるか、地域おこしについて学び合いながら、その人自身の働き方などの「人生デザイン」を考える場として提供しています。私たちは地域連携を担当しており、若者たちに花山地区の祭りのメンバーとして手伝ってもらっています。花山は、300年を超える歴史ある鉄砲祭り(5月)や夏祭り、秋の湖秋祭り、新そば祭り、冬の雪っこ祭りなど大きな祭りが多いのですが、人手が足りなくなってきています。 移住体験連携事業の中で都市に住む方たちが、花山の女性たちと交流する「かがやく女性たちと過ごす花山いなか時間」という企画の中でも、湖秋祭りのスタッフとして参加してもらうなど、移住につながる事業ではありますが、交流やサポートしてくれる人に、まず足を運んでもらう取り組みになっています。

伊藤さん 高齢化はしていますが、それだけにここに住む人たちは、暮らしの知恵を持っている「先生」。そういう人がいるうちに昔ながらの生活の知恵、技術を教わるということも必要なんじゃないかと思っています。

佐々木さん 先ほど紹介した「花山いなか時間」では、首都圏の方たちに、この地区の各家庭に伝わる小正月の料理を体験してもらう企画もしています。以前、各家庭の小正月の料理やお供えの仕方、拝み方などを一冊の本にまとめていましたが、交流しながら実際に伝える形になります。

空き家片づけ隊でも、昔の道具や古文書などの記録を見せてもらったり、いただいて保管させてもらったりするようにしています。みんな価値がないものだと思って捨てたり燃やしたりしちゃうんですよ。地域おこし協力隊で発行している地域の新聞に、そうした暮らしの記録、地域の宝を堀りおこして掲載していくつもりです。

インタビューした人:はなやまネットワーク座談会
category: 移住者インタビュー   theme: 栗原市 花山地区

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