椅子の張り替え専門店『CHAIR BANK』から考える、移住に必要なもの

椅子の銀行、CHAIRBANK櫻井さん


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海に面した宮城県塩釜市、塩釜神社表参道の大通りに面した商店街に椅子の張り替え専門店『CHAIR BANK』があります。アンティーク調で隠れ家カフェのような佇まいのお店は、椅子の張り替え専門店で、製造・販売そして修理を行う工場になっています。『CHAIR BANK』の代表を勤める櫻井さんは隣の松島町出身。2年半前、Uターンをしてこの場所で開業しました。珍しい業種のお店には首都圏からもお客さまがおとずれます。



椅子職人への道


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櫻井さんは元はインテリア会社の営業マン。でも、仕事に疑問を感じ、職人の道へ進みます。どっぷりと職人社会に身を置いた約7年間の修行時代。仕事を覚えるまでは、毎日「帰れ」「帰れ」と言われ、厳しい上下関係や理不尽なことで怒鳴られ、時には金づちが飛んで来た修行時代。「いつか見ていろこの野郎」という反骨精神があったから、今があるんだと櫻井さんは笑います。修行先の埼玉から宮城に戻る際にもらった寄せ書きの色紙や集合写真には、「東北魂で優しく強く頑張れっ」「目指せ東北一」「“櫻井優”の椅子張りを突き進め」など、修行先の仲間たちからの櫻井さんへの愛情がひしひしと伝わってきます。

後輩の指導
 
そんなふうに鍛えられた櫻井さんは若手の職人育成にも力を入れています。現在櫻井さんのところにいる一番若い子は17歳。高校に行きながら修行をしています。普通は技術指導料としてお金をもらうのが一般的なのですが、櫻井さんのところでは雇用して給料を与えながら技術を教えています。修行時代、食べるものに苦労していた櫻井さんに、時には親方は自身で育てた野菜をくれたり、夜食を用意してくれたりと、仕事以外でも気にかけてくれたと振り返ります。「親方にして貰った以上のことをしてあげたい」と語る櫻井さん。「若手を育てている間は赤字も覚悟しています。」と、語りながらも、どこか楽しんでいる様子がうかがえます。どう経営をしていくのか、と尋ねると「その分は自分が稼ぐからいいんです」。そして余裕の表情で「僕、不死身なので」「ライオンと同じですよ、えさがとれないときは親がなんとかする」でっかい懐の櫻井さん。30歳でここまで言える人はなかなかいないかもしれません。
 
『CHAIR BANK』では技術の習得はもちろん、製造、販売、営業まで、職人1人1人がすべてを手掛けることが出来ることを目指しており、独立のサポートもしてます。「独立していった子に負ける気がしない」、「越えたら越えたで嬉しいし、困っていたら手伝いますよ」自信満々に言う櫻井さん。櫻井さんが修行をはじめて3年程がたった頃、突然「職人の目になる」瞬間が訪れました。それまで見えなかったものが見えるようになったのだそうです。そしてその時から、職場でも仕事を任されるようになりました。櫻井さんの自信はここにあるのかもしれません。今時の軽やかさとオシャレさを備えながらも、肚の座った職人です。



町に人を呼びたい、町を元気にしたい


もともと「地元に恩返しをしたいという思いがあった」という櫻井さんは、修行後は宮城に戻るつもりでしたが、震災があって地元松島の隣町・塩釜にUターンすることにしました。「瀬戸内がエーゲ海だったら、三陸はスカンジナビアだと思った」と言います。のんびりした、鳥のさえずりが心地よく感じられる豊かな場所です。しかしそんな素敵な場所なのに、町に活気がない。小さい頃ににぎやかだった商店街の記憶がある櫻井さんは、何か新しいもので人を惹きつけたいという思いがあり、原動力になっています。

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「兄ちゃん、椅子なんかで食っていけるの?」
「もっと街中でやれば?」

開業するにあたり、周囲から言われました。でも、櫻井さんは意に介しませんでした。椅子はくらしのなかにとけこんでいる身近な存在です。
「自宅で良い椅子に座って珈琲を飲めたら、最高じゃないですか」と櫻井さん。
子どもの頃に使っていたピアノの椅子、ボロボロになった車のシート、初任給で買って以来40年使っている椅子、大量生産で作られた椅子…色々なものが『CHAIR BANK』に持ち込まれます。使い人の年齢はもちろん、どんな生活スタイルで使うのか?、買った当時のこと…色々な話を丁寧に聞きながら、その人のくらしに併せた椅子に修理し、仕上げると、生涯を共にできるどころか、子の世代に継がれる椅子になります。その人の人生、思い出にふれながら、長く寄り添える椅子に仕上げられるよう椅子と向き合っていると語ります。

椅子の修理

「この人に直して欲しい」と椅子を持って来て貰えるのが櫻井さんの喜びです。「ヨーロッパでは3代使い続ける家具と言うけれど、日本だって昔からものを大切に扱う文化があった」。櫻井さんが修理をした椅子は30年、40年は使えるものに生まれ変わります。今後、世代を受け継いで使って貰える椅子になっていればとてもうれしいと言います。良いものがひとつあるだけで違う。でも、それを感じられる人が減っている今だからこそ、椅子を通してそれを伝えていきたい。そのためには、椅子を修理するとう技術だけでなく、椅子を修理して長く使い続けたいと依頼者の思いに寄り添うことの出来るシャインを育成することも重要と考えているそうです。



田舎への移住に必要なもの


「塩釜の神社に行ったことよりも、椅子を買ったことの方が記憶に残っています」
通りすがりでたまたま椅子を買ったお客さんから、そんなメールが届いたそうです。『CHAIR BANK』の名前が売れたら、塩釜の名前も売れるかもしれません。櫻井さんはお店と地域のことをセットで考えています。今は商店街で孤軍奮闘の櫻井さん。田舎への移住に必要なものは?と尋ねてみると
「こつこととひたむきに、自ら行動を起こしやってみること。そうすれば、周囲の人が自然と興味を持ってくれ、溶け込んでいけるのはと思います。」と、話して下さいました。

移住

デジタルの時代だからこそ、アナログにこだわりたい。「アナログなことやって、なんかカッコいいな〜と思ってもらい、若者がここに来てくれたら。と櫻井さん。『CHAIR BANK』がこれからの若者たちのアクションのきっかけになれたらと、期待も寄せています。「幸せは一瞬で良いと思うんです。一瞬の為に苦労する。でも、そのときになったら、苦労している時の方が幸せだと感じるんだろうなぁと、思うんですけどね」。

一緒に楽しいことをしたい仲間を絶賛募集中!何でもいいから、まずは自分でやってみる。ここ、塩釜にはそんな若者を応援してくれる頼もしい兄貴がいます。ぜひ一度『CHAIR BANK』に足を運んでみて下さい。

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インタビューした人:櫻井優さん
category: 移住者インタビュー   theme: 塩竈市

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